最近、ヨーグルト作りにハマっている。
種菌(いわゆる、0.1L 飲むヨーグルト)から、10倍量(1L)のヨーグルトを作っている。飲むヨーグルト1本は、だいたい100円くらいなので、10倍量で1000円となって、必要経費を引いても、だいたい700円弱お得である。また、ヨーグルトの酸味や固さを自分の好みにできる。
今回、「ガセリ菌を使った10倍量(1L)ヨーグルトの作製法」と「菌の増殖曲線」について検討したことを、実験ぽく紹介する*1。
10倍量ヨーグルト作製のマテリアル
- ガセリ菌の種菌(= 某メグミルク製のガセリ菌SP株の飲むヨーグルト)
- 培地(= 某メグミルク製の牛乳)
- グルコース(= 三温糖)
- 1L プラビーカー(= ヨーグルトメーカーの容器)
- スパチュラ(いわゆる、スプーンてやつ)
- 温度・時間可変の恒温器(いわゆる、ヨーグルトメーカー)

アイリスオーヤマ ヨーグルトメーカー 飲むヨーグルトモード 温度調節機能 付き IYM-013
- メディア: ホーム&キッチン
10倍量ヨーグルトの作製プロトコール
1. 1L プラビーカーに対して、スパチュラ3-4杯分のグルコースを添加する。おそらく15-20gくらい。
2. ガセリ菌の種菌を全量加えて、振盪混合する(いわゆる、振って混ぜる)。
3. 培地で、1L目盛までメスアップです(いわゆる、牛乳を900mL入れる)。
4. 蓋を軽めに閉めて、35℃の恒温器(いわゆる、ヨーグルトメーカー)内で静置して、オーバーナイト・インキュベート(一晩培養)する。
ガセリ菌の場合、だいたい、12-15時間ほどインキュベートすると、良い感じの固形ヨーグルトが出来あがる。
5. 4℃で保管して(冷蔵庫で保管)しておく。そして、官能評価を行う。いわゆる、食う。
種菌の増殖曲線の検討
微生物の増殖曲線について調べてみると、
ゴンペルツの増殖曲線 (Gompertz growth curve)
というのがあるようだ。
もともと、1832年に、Benjamin Gompertz によって、人間の死亡率を推定するためのモデル式として、「ゴンペルツ関数(Gompertz function)」
が提案された。
Gompertz, B. "On the Nature of the Function Expressive of the Law of Human Mortality, and on a New Mode of Determining the Value of Life Contingencies." Phil. Trans. Roy. Soc. London 123, 513-585, 1832.
それから、さらに100年後、1932年に、Charles Winsorによって、微生物の成長過程を説明するための方程式
として使用されたようだ。
ゴンペルツの増殖曲線
の一般式は、以下のように定義される。
このとき、
A は、飽和(上限)時の値, A > 0
B, k は、成長速度係数 (Growth velocity factor), k > 0, B > 0
I は、変曲点
t は、相対時間
をそれぞれ意味する。
今回、この増殖曲線について、 成長速度係数 k を、0.75、0.5、0.3、0.2、0.1 の5パターンに設定して、 R上でシミュレーションしてみた。
## 固定パラメータの設定 # A: 飽和(上限)時の値, A > 0 A <- 10 # B: 成長速度係数, B > 0 B <- 7 # I: 変曲点 I <- 5 # t: 相対時間 t <- seq(0, 20, 0.5) ## パラメータ k の設定 # 成長速度係数 k = 0.75 k1 <- 0.75 Lt1 <- round(A*exp(-B*exp(-k1*(t-I))), 3) # 成長速度係数 k = 0.5 k2 <- 0.5 Lt2 <- round(A*exp(-B*exp(-k2*(t-I))), 3) # 成長速度係数 k = 0.3 k3 <- 0.3 Lt3 <- round(A*exp(-B*exp(-k3*(t-I))), 3) # 成長速度係数 k = 0.2 k4 <- 0.2 Lt4 <- round(A*exp(-B*exp(-k4*(t-I))), 3) # 成長速度係数 k = 0.1 k5 <- 0.1 Lt5 <- round(A*exp(-B*exp(-k5*(t-I))), 3) ## データフレームに変換 Data <- data.frame(t, Lt1, Lt2, Lt3, Lt4, Lt5) par(family="HiraKakuProN-W6", lwd=1.5, cex=1, mgp=c(2.5, 1, 0), mai=c(0.75, 0.75, 0.8, 0.25)) plot(Data$t, Data$Lt1, type="l", col="#0078B9", main=expression(A %.% exp(-B %.% exp(-k*(t - I)))), xlab="time (相対時間)",ylab="Values of Gompertz growth model") points(Data$t, Data$Lt2, type="l", col="#FF7700") points(Data$t, Data$Lt3, type="l", col="#00A400") points(Data$t, Data$Lt4, type="l", col="#E90017") points(Data$t, Data$Lt5, type="l", col="#9D62C3")
さらに、plotlyでも作図してみた*2。
if(!require("plotly")){install.packages("plotly")}; library(plotly) fig <- plot_ly(Data, x = ~t) fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt1, name = 'Lt1', mode = 'lines') fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt2, name = 'Lt2', mode = 'lines') fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt3, name = 'Lt3', mode = 'lines') fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt4, name = 'Lt4', mode = 'lines') fig <- fig %>% add_trace(y = ~Lt5, name = 'Lt5', mode = 'lines') fig <- fig %>% layout(xaxis = list(title = 'time'), yaxis = list(title = 'Values of Gompertz growth model')) fig
まとめ
カゼリ菌の10倍量ヨーグルトは、だいたい12時間ほどで固まる。
シミュレーションの結果を考慮すると、種菌はLt1
かLt2
くらいスピードで増殖して、
牛乳に含まれるカゼインの酸凝固が進むのではと推測される。
参考文献
Gompertz sigmoidal model の参考文献
Rui Yuan et al, Modified Gompertz sigmoidal model removing fine-ending of grain-size distribution, 2019.