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Wikipedia 英語記事「COVID-19」の日本語訳を公開してみた【その3: COVID感染症の病態生理】

この記事は、2021年12月30日現在のWikipedia 英語記事「COVID-19」を日本語訳したものである。

en.wikipedia.org

この情報は英語ページにはありますが、まだ日本語ページは存在していません。結構しっかりした内容だったので、このwikipedia記事の日本語訳を作成することにしました。

コロナ関連の情報はすぐに古くなりますので、その都度、新しい情報を確認してください。

Pathophysiology / 病態生理

SARS-CoV-2ウイルス(COVID-19)は、生体内の様々な細胞やシステムに感染する。 COVID-19は、上気道(副鼻腔、鼻、喉)および下気道(気管および肺)に感染することがよく知られている*1。 肺は、COVID-19の影響を最も受ける臓器である。 なぜなら、ウイルスは、肺のII型肺胞細胞の表面に最も豊富に存在する、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の受容体を介して、宿主細胞にアクセスする*2。 ウイルスは、「スパイク」と呼ばれる、特殊な表面糖タンパク質を用いて、ACE2受容体とコネクトして、宿主細胞に侵入する*3

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COVID-19の病原性。(1A)COVID-19ウイルスは、エンドサイトーシス(endocytosis)あるいはACE2受容体に結合して膜融合を介して、上皮細胞に侵入し、ウイルスのRNAを細胞質内に放出する。(1B)ウイルスRNAは、細胞のシステムを利用して、ウイルスの非構造タンパク質や構造タンパク質を翻訳し、そのRNAを複製する。(1C)ウイルスの構造タンパク質S、E、Mは粗面小胞体(RER)で合わさる。(1D)その後、ウイルス構造とヌクレオキャプシドが小胞体ゴルジ体中間体(ERGIC)で集合体になる。(1E)ゴルジ小胞にパックされた、新しいウイルスは細胞膜と融合し、エキソサイトーシスを介して放出される。(2)COVID-19感染により炎症因子が誘導され、マクロファージや樹状細胞の活性化を引き起こす。(3)主要組織適合性複合体IおよびII(MHC IおよびII)を介した、COVID-19ウイルスの抗原提示は、体液性および細胞性免疫を刺激し、サイトカインおよび抗体の産生をもたらす。(4)COVID-19の重症例では、ウイルスは下気道に到達し、II型肺細胞に感染して、アポトーシスと表面活性物質(surfactant)の損失を引き起こす。マクロファージと好中球が流入して、サイトカインストーム*4を引き起こす。毛細血管の漏出により、肺胞水腫(alveolar edema)が生じる。ヒアルロン酸膜が形成される。これらの病理学的変化のすべては、肺胞のダメージや崩壊をもたらし、ガス交換を障害する。(出典元

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*1:Harrison AG, Lin T, Wang P (December 2020). "Mechanisms of SARS-CoV-2 Transmission and Pathogenesis". Trends in Immunology. 41 (12): 1100–1115. doi:10.1016/j.it.2020.10.004. PMC 7556779. PMID 33132005.

*2:Verdecchia P, Cavallini C, Spanevello A, Angeli F (June 2020). "The pivotal link between ACE2 deficiency and SARS-CoV-2 infection". European Journal of Internal Medicine. 76: 14–20. doi:10.1016/j.ejim.2020.04.037. PMC 7167588. PMID 32336612.

*3:Letko M, Marzi A, Munster V (April 2020). "Functional assessment of cell entry and receptor usage for SARS-CoV-2 and other lineage B betacoronaviruses". Nature Microbiology. 5 (4): 562–569. doi:10.1038/s41564-020-0688-y. PMC 7095430. PMID 32094589.

*4:感染症などによって、サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)が異常に上昇して、その作用が全身に及ぶことで、好中球の活性化、血液凝固機構活性化、血管拡張などを全身に起こり、多臓器不全にまで進行する。この状態を、サイトカインストーム(cytokine storm)という。